昆布のような乾物に、レーザーで名入れはできるのでしょうか。
今回は、贈答用の昆布製品に社名やロゴを刻印したいというご相談をいただき、お試し加工として乾燥昆布への刻印を実施しました。食品ならではの懸念点をどう検討したか、実際に使用した加工パラメータ、そして仕上がりの様子までをご紹介します。
今回の加工事例の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| お客様 | 昆布製品を扱う食品関連の事業者様 |
| ご相談内容 | 贈答用の昆布製品への名入れ(文字・法人ロゴの刻印) |
| 加工素材 | 乾燥昆布 |
| 使用機種 | UVレーザーマーカー「LM110U」(加工エリア 110×110mm) |
| 加工データ | オリジナルデータ(ロゴ) |
| 加工時間 | 約10.2秒 |
加工前の昆布は、下の写真のような状態でお預かりしました。

ご相談内容:贈答用の昆布に社名やロゴを名入れしたい
いただいたご相談は、昆布製品に贈答用の名入れ(文字の刻印)や法人ロゴを入れたい、という内容でした。現時点では刻印加工は行っておらず、レーザー加工機の導入を検討されている段階とのことです。
仕上がりについては「はっきりと文字が見えるレベルの視認性がほしい」というご要望をいただきました。贈答品のパッケージではなく昆布そのものに名入れをする以上、遠目にも文字として認識できることが前提になります。この「視認性」が、今回の加工結果を評価するうえでの中心的な基準になりました。
食品へのレーザー加工で事前に検討した3つの懸念点
昆布は、これまでに加工実績のない素材でした。そのため、お試し加工をお受けするにあたり、実際に運用されたときに問題になりうる点を事前に3つお伝えしています。
食品、とくに乾物や海産物への加工を検討されている方には共通する論点になりますので、事例をお借りして共有します。
①昆布に含まれる塩分による加工機への影響
もっとも注意が必要なのが、昆布に含まれる塩分です。
レーザー加工では、素材の表面から煙や粉塵が発生します。塩分を含んだ素材の場合、この煙や粉塵が加工機の内部に付着し、金属パーツの錆びや基板の腐食を進行させる原因になります。加工そのものができるかどうかとは別に、機械を長く使い続けられるかという問題です。
この点は、加工が問題なく完了した後も変わりません。実際に導入して継続的に運用される場合は、集塵・排気の設計と加工後の清掃を前提に考える必要があります。
②乾燥昆布のうねり・反りによる焦点ズレ
レーザー加工では、レーザー光がもっとも細く絞られる「焦点」の位置に素材の表面がある状態で照射することで、狙いどおりの刻印が得られます。焦点がずれると、刻印が薄くなったり、輪郭がぼやけたりします。
乾燥昆布には特有のうねりがあり、平らな板のようにはなりません。さらに、レーザーの熱が加わることで加工中に反り返ってしまう可能性もあります。素材の表面の高さが場所によって変わるということは、そのまま焦点ズレのリスクになります。
今回は、加工テーブルの上で昆布をテープで押さえ、できるだけ平らな状態を保ったうえで加工しました。

なお、加工の前段階では、昆布がレーザーで割れてしまう場合に備えて「少し湿らせてから加工してもよい」というご提案もお客様からいただいていました。ただし今回は割れが発生しなかったため、湿らせる処置は行わずにそのまま加工しています。
③焦げによる見た目・風味への影響
3つめは焦げです。
レーザーの出力が強すぎると焦げが目立ち、食品として見栄えが悪くなります。それだけでなく、焦げ臭さや苦味が残ってしまう可能性もあります。贈答用という用途を考えると、刻印がはっきり見えることと、焦げが出ないことを両立させる必要がありました。
加工内容と加工パラメータ
今回はUVレーザーマーカー「LM110U」を使用しました。加工エリアは110×110mmで、1回の加工で刻印できる範囲はこの中に収まる必要があります。
加工データはお客様からお預かりしたオリジナルのロゴデータを使用し、以下のパラメータで加工しています。
| パラメータ | 設定値 |
|---|---|
| 速度 | 1,000mm/sec |
| 周波数 | 25kHz |
| パルス幅 | 4ns |
| DPI | 600 |
| 加工回数 | 1回 |
| 加工時間 | 約10.2秒 |
各パラメータの意味は次のとおりです。
- 速度:レーザー照射地点が移動する速度です。速いほど薄く、遅いほど濃い加工になる傾向があります
- 周波数:1秒間に繰り返す波の数です。周波数を上げるとムラが発生する可能性が高くなります(設定範囲は20〜150kHz)
- パルス幅:波の時間幅です。値が小さいほうが、加工箇所の周辺への熱影響を抑えられます(設定範囲は2〜500ns)
- 加工回数:同じ箇所を繰り返し加工する回数です
今回、焦げへの懸念に対しては、パルス幅を設定範囲の下限に近い4nsとすることで、加工箇所の周辺に熱が広がりにくい条件を選んでいます。
なお、レーザーの種類ごとの特性の違いについては、ファイバー・CO2・UVレーザーマーカーの違いで解説しています。
加工中の様子は以下の動画でご覧いただけます。
加工結果と仕上がり
加工後の昆布が以下になります。

刻印は白っぽい色で仕上がり、濃い茶褐色の昆布の地色との明暗差によって、文字とマークがはっきりと浮かび上がりました。ご要望であった「はっきり文字が見える」という視認性の基準は満たせる結果です。
懸念していた焦げについては、刻印部分に黒ずみは見られませんでした。ただし、今回検証したのは見た目の範囲であり、風味への影響については確認していません。
もうひとつ、実務面で重要な結果として、加工による粉が発生しなかった点が挙げられます。素材の表面を削る加工では、削れた粉が表面に残るため加工後に拭き取る工程が必要になりますが、今回の条件では粉の発生がなく、拭き取りは不要でした。食品を扱う現場では、加工後の後処理工程がひとつ減ることは、そのまま作業時間とリスクの削減につながります。

ここに掲載したパラメータは参考値です。加工機や素材の状態、加工環境によっては同一の結果にならない場合があります。とくに天然素材である昆布は、産地や厚み、乾燥の度合いによって状態が変わるため、実際にお使いになる素材でのテストが有効です。
同じUVレーザーマーカーによる素材検証の事例として、UVレーザーマーカーによるガラスの加工検証もあわせてご覧いただけます。
まとめ
乾燥昆布への名入れは、UVレーザーマーカーによる加工で実現できました。白っぽい刻印が濃い地色に対して明るく浮かび上がり、贈答用として求められる視認性を確保できています。加工時間は約10.2秒で、焦げによる黒ずみも見られませんでした。
一方で、加工そのものができることと、継続的に運用できることは別の問題です。昆布に含まれる塩分は加工機の錆びや腐食の原因になるため、導入にあたっては集塵・排気と清掃を含めた運用の設計が必要になります。
また、昆布は産地や厚み、乾燥の度合いによって状態が変わる天然素材です。今回の結果がそのまま再現できるとは限らないため、実際に扱われる素材で事前に確認されることをおすすめします。