ポリプロピレン製キャップに6mm角の二次元コードをUVレーザーで刻印|梨肌・光沢面の加工事例

公開日:2026年9月24日
/ 最終更新日:2026年9月24日

ポリプロピレン(PP)製の小さなキャップに、コードリーダーで読み取れる濃さの二次元コードを刻印できるのか。樹脂部品に識別コードを付けたいと考えたとき、まず気になるのがこの点です。

本記事では、研究機関のお客様からご相談いただいた、白色ポリプロピレン製ボトルキャップへの6mm角の二次元コード刻印の事例をご紹介します。表面の仕上げが異なる「梨肌」と「光沢面」の2種類のキャップについて、加工条件と仕上がり、読み取り確認の結果をまとめました。

ご相談内容:実験用容器のフタに、読み取れるコードを刻印したい

研究機関のお客様から、実験用容器(スクリュー管瓶)のフタに識別コードを刻印したいというご相談をいただきました。フタの素材は白色のポリプロピレンです。

お客様が特に確かめたいとお考えだったのは、コードリーダーで読み取れる濃さで刻印できるかどうかという点でした。そこで、キャップの現物をお送りいただき、当社で加工を行いました。

加工には、LM110U(UVレーザーマーカー 5W)を使用しています。

加工前に確認したこと

加工に入る前に、お客様とメールでいくつかの点をすり合わせました。樹脂部品へのコード刻印を検討する方にも共通しやすい論点のため、順にご紹介します。

コードデータはお客様側でご用意いただく

ご相談の時点で、お客様はマイクロQRコードの刻印を希望されていました。マイクロQRコードとは、通常のQRコードよりも小さな面積に印字できるよう規格化された二次元コードです。

LM110U付属のソフトウェアでは通常のQRコードを作成できますが、マイクロQRコードの作成機能はありません。そのため、コードのデータはお客様にご用意いただく必要があることを事前にお伝えしました。データ形式は、AI形式またはDXF形式を推奨しています。

今回はお客様からDXF形式のコードデータをご提供いただき、当社で内容を確認したうえで加工に使用しました。なお、付属ソフトウェアでのQRコードの作成手順は「QRコード作成機能のご紹介」で解説しています。

梨肌と光沢面、表面の違いで仕上がりは変わるか

お送りいただいたキャップは大小2種類で、表面の仕上げがそれぞれ異なっていました。

キャップ 表面の仕上げ
小さいキャップ 梨肌
大きいキャップ 光沢面

梨肌とは、梨の皮のような細かい凹凸をつけた、つや消しの表面仕上げのことです。一方の光沢面は、なめらかでつやのある表面を指します。

お客様は、この表面性の違いによって、刻印の見え方や設定条件にどのような差が出るかも確認したいとお考えでした。

加工前の梨肌と光沢面のポリプロピレン製ボトルキャップ
写真1:加工前のキャップ(左:梨肌の小さいキャップ、右:光沢面の大きいキャップ)

限られた素材数でのテスト加工の進め方

当社での加工では、本番の前に、素材に合わせてパラメータ(加工条件)を調整するテスト加工を行います。そのため、お客様には素材を多めにご用意いただくようお願いしていました。

一方で、今回お送りいただいたキャップは、それぞれ8〜10個と数が限られていました。お客様にとってより重要だったのは、小さい梨肌のキャップです。

そこでお客様のご希望に沿って、まず大きい光沢面のキャップでパラメータ出しを行いました。そのうえで、決まったパラメータを使い、梨肌・光沢面の両方のキャップに本番の加工を行っています。

加工内容と加工パラメータ

今回の加工内容と、使用したパラメータは次のとおりです。

項目 内容
使用機種 LM110U(UVレーザーマーカー 5W、加工エリア110×110mm)
加工素材 ポリプロピレン製ボトルキャップ(梨肌・光沢面の2種類)
加工データ お客様ご提供の二次元コード(6mm角、DXF形式)
速度 1000mm/sec
周波数 25kHz
パルス幅 4ns
ハッチング間隔 0.05mm
加工回数 1回
加工時間 約1.2秒

※上記以外のパラメータはデフォルト値で加工しています。梨肌・光沢面ともに同じパラメータです。

各パラメータの意味は次のとおりです。

  • 速度: レーザーの照射地点が移動する速さです。速いと薄く、遅いと濃い加工になる傾向があります。
  • 周波数: レーザーが1秒間に繰り返す波の数です。25kHzは1秒間に2万5,000回を意味します。周波数を上げると、ムラが発生しやすくなります。
  • パルス幅: レーザーの波1回あたりの時間幅です。ns(ナノ秒)は10億分の1秒を表します。値が小さいほど、加工箇所の周辺への熱の影響を抑えられます。
  • ハッチング間隔: レーザー加工では、塗りつぶしを細かい平行線の重なりで表現します。その平行線同士の間隔です。
  • 加工回数: 同じ箇所を繰り返し加工する回数です。

なお、これらのパラメータは参考値です。加工機や素材の状態、加工環境によっては、同じ設定でも同一の結果にならない場合があります。UVレーザーマーカーの仕組みや、ファイバーレーザー・CO2レーザーとの違いについては「レーザーマーカーの種類」で解説しています。

LM110Uの加工台にボトルキャップを設置した様子
写真2:加工台にキャップを設置した様子

実際の加工の様子は、次の動画でご覧いただけます。

動画1:梨肌キャップへの刻印
動画2:光沢面キャップへの刻印

加工結果と仕上がり

梨肌・光沢面のどちらのキャップにも、6mm角の二次元コードを刻印できました。加工を担当したスタッフの所見では、どちらも印刷したような見た目に仕上がっています。

一方で、同じパラメータで加工しても、表面の状態によって仕上がりの色味が若干異なりました。以下に、それぞれの仕上がりを掲載します。

梨肌キャップの仕上がり

お客様にとって重要度の高かった、小さい梨肌のキャップへの刻印結果です。

梨肌のボトルキャップに刻印した6mm角の二次元コード
写真3:梨肌キャップへの刻印結果(6mm角)

光沢面キャップの仕上がり

パラメータ出しにも使用した、大きい光沢面のキャップへの刻印結果です。梨肌のキャップと同じパラメータで加工しています。

光沢面のボトルキャップに刻印した6mm角の二次元コード
写真4:光沢面キャップへの刻印結果(6mm角)

コードリーダーとスマートフォンでの読み取り確認

刻印したコードは、当社の簡易的なコードリーダーとスマートフォンで読み取れることを確認しました。梨肌・光沢面のどちらのキャップでも読み取りが可能でした。

今回の確認は、簡易的な機器で読み取れるかどうかを確かめたものです。

同様の加工を検討する際のポイント

今回の事例から、樹脂部品への二次元コード刻印を検討する際に押さえておきたい点を4つにまとめます。

  1. コードの種類によっては、データを別途用意する
    LM110U付属のソフトウェアは通常のQRコードを作成できますが、マイクロQRコードは作成できません。マイクロQRコードを刻印したい場合は、外部でデータを作成し、AI形式またはDXF形式で用意する必要があります。

  2. 実際に使う部品で仕上がりを確認する
    同じポリプロピレンでも、表面が梨肌か光沢面かによって、仕上がりの色味に差が出ました。素材名だけで判断せず、実際に使用する部品で仕上がりを確かめることが大切です。

  3. 読み取りは、運用で使う機器で確かめる
    今回は簡易的なコードリーダーとスマートフォンで読み取りを確認しました。読み取りの確実性が求められる用途では、現場で実際に使うコードリーダーで確認しておくと安心です。

  4. パラメータ出しの分も含めて素材を用意する
    今回はキャップの数が限られていたため、光沢面のキャップでパラメータ出しを行い、本番の加工に進みました。テスト加工の分を見込んで素材を多めに用意しておくと、条件の調整に余裕が生まれます。

LM110Uで加工できる素材については、「UVレーザーマーカー「LM110U」で加工できる素材について」にまとめています。

まとめ

白色ポリプロピレン製のボトルキャップに、UVレーザーマーカーで6mm角の二次元コードを刻印した事例をご紹介しました。加工時間は約1.2秒で、梨肌・光沢面のどちらのキャップにも同じパラメータで刻印でき、簡易的なコードリーダーとスマートフォンで読み取りを確認できました。一方で、表面の状態によって仕上がりの色味には若干の差がありました。樹脂部品へのコード刻印を検討する際は、コードデータの準備とあわせて、実際に使う部品と読み取り機器での確認を進めることがポイントです。