製品全般
ファイバーレーザーとは?
はじめに
金属への刻印やマーキング、切断を行いたいと考えた時、必ず候補に挙がるのが「ファイバーレーザー」です。しかし、「CO2レーザーと何が違うの?」「どんな素材に使えるの?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、金属加工において圧倒的なパフォーマンスを発揮するファイバーレーザーの仕組み、メリット・デメリット、そしてCO2レーザーとの決定的な違いについて分かりやすく解説します。
1. ファイバーレーザーとは?
ファイバーレーザー(Fiber Laser)とは、レーザーの元となる光を増幅させる媒体(媒質)に「光ファイバー」を用いたレーザー加工機のことです。
光ファイバーの中に特定の元素(イッテルビウムなど)を添加し、そこで光を増幅させることで、非常にエネルギー密度の高いレーザービームを作り出します。
なぜ「金属」に強いのか?
最大の理由は「波長」にあります。 ファイバーレーザーの波長は約1,064nm(ナノメートル)です。この波長は金属に吸収されやすいという特性を持っています。
一方で、一般的なCO2レーザー(波長:約10,600nm)は金属に反射されやすく、うまく熱が伝わりません。ファイバーレーザーは金属が光を効率よく吸収するため、金属へのマーキング、深掘り、切断において最強の選択肢となります。
2. ファイバーレーザーの3つのメリット
導入を検討する上で知っておきたい、主なメリットは以下の3点です。
① 金属への高速・高精細な加工
ファイバーレーザーは集光径(レーザーが当たるスポットのサイズ)が極めて小さいため、微細な文字やQRコード、写真データなどを高解像度で金属に刻印できます。また、エネルギー効率が良いため、圧倒的なスピードで加工が完了します。
② 長寿命でメンテナンスフリーに近い
ファイバーレーザーは構造がシンプルで堅牢です。 発振器の寿命は約10万時間と言われており、メンテナンスの手間とランニングコストを大幅に抑えることができます。
③ 黒色発色(アニーリング)が可能
ステンレスなどの特定の金属に対して、熱による酸化反応を利用して、表面を削らずに黒く発色させる「アニーリングマーキング」が可能です。医療器具や高級なネームプレートなど、表面を滑らかに保ちたい用途に最適です。
3. CO2レーザーとの違い(比較表)
よく比較される「CO2レーザー」との違いを一目でわかるように表にまとめました。
| 特徴 | ファイバーレーザー | CO2レーザー |
|---|---|---|
| 得意な素材 | 金属全般(ステンレス、アルミ、鉄、金、銀など)、一部のプラスチック | 非金属(木材、アクリル、革、紙、布など)、ガラス |
| 苦手な素材 | 透明な素材(アクリルやガラスを透過してしまう)、木材 | 金属(反射してしまうため、専用剤がないと加工不可) |
| 波長 | 約 1,064 nm | 約 10,600 nm |
| 主な用途 | 金属部品への型番刻印、銘板作成、深掘り | アクリルグッズ製作、革製品の刻印、木材カット |
結論:
- 金属を加工したいなら 「ファイバーレーザー」
- 木材やアクリルを加工したいなら 「CO2レーザー」(弊社CO2レーザー加工機はこちら)
このように使い分けるのが基本です。
4. ファイバーレーザーのデメリット・注意点
導入前に知っておくべき注意点もあります。
- 透明な素材は加工できない 透明なアクリルやガラスは、ファイバーレーザーの波長が透過してしまうため、基本的には加工できません。
- 木材や布への加工は不向き 高出力であれば焦がすことは可能ですが、仕上がりが汚くなったり、火災のリスクが高まったりするため推奨されません。
- 安全対策が必須 目に見えない強力なレーザー光を使用するため、適切な保護メガネの着用や、保護カバー付きの筐体を使用するなど、安全管理が重要です。
5. こんな用途におすすめ(活用事例)
ファイバーレーザーの活躍の場は、文字やロゴの刻印だけにとどまりません。高出力なモデルや専用のヘッドを使用することで、金属加工のあらゆるシーンで効率化を実現します。
ここでは「マーキング」「切断」「溶接」「クリーニング」の4つのカテゴリに分けて、具体的な活用事例をご紹介します。
【1】マーキング・深掘り刻印
金属表面への消えない印字や、微細な加工に最適です。
-
製造業・工場:
金属部品へのシリアルナンバー、ロット番号、QRコード/データマトリックスの高速印字
工具や金型への管理番号の深掘り刻印 -
オリジナルグッズ・ノベルティ製作:
ステンレスタンブラーやカトラリーへの名入れ
真鍮やアルミ製のドッグタグ、キーホルダーの作成 -
電子部品・精密機器:
プリント基板やICパッケージへの微細な印字
医療器具(メスやピンセット)への腐食しない黒色マーキング
【2】金属切断(ファイバーレーザー切断機)
板金加工において、金型不要で自由な形状を高速かつ高精度に切り出せます。
-
試作・少量多品種生産:
板金試作品のパーツ切り出し(ステンレス、鉄、アルミなど)
機械装置のブラケットやカバー、専用治具の製作 -
看板・ディスプレイ製作:
ステンレスや真鍮を使った切り文字看板の製作
複雑なデザインの装飾パネルやメタルアートのカット -
個人事業主・本格DIY
オリジナルのキャンプギア(焚き火台やグリルプレート)の自作
バイクや自動車のカスタムパーツ製作
【3】金属溶接(ファイバーレーザー溶接機)
従来のTIG溶接やMIG溶接に比べ、熱による歪みが極めて少なく、初心者でも美しいビード(溶接跡)仕上げが可能です。
-
薄板板金加工:
厨房機器や制御盤ボックスなど、ステンレス薄板の歪みを抑えた美しい溶接
異なる種類の金属(異材)接合 -
精密部品の組立:
熱影響を嫌う電子部品ケースやセンサー筐体の封止溶接
【4】サビ取り・除去(ファイバーレーザークリーナー)
母材(金属の地肌)を傷つけずに、表面のサビ、塗装、油汚れだけをレーザーで瞬時に蒸発させて除去します。
-
メンテナンス・レストア:
自動車やバイクのエンジンパーツ、フレームの頑固なサビ取り
古い機械部品や工具の再生 -
製造現場の下処理・後処理:
溶接前の金属表面の酸化膜や油分のクリーニング
溶接後の焼け取り(焼け色の除去) -
金型クリーニング:
ゴム成形や樹脂成形金型に付着した残留物や汚れの非接触クリーニング
まとめ:金属加工ならファイバーレーザーを選ぼう
ファイバーレーザーは、金属加工において「速度」「精度」「コストパフォーマンス」のバランスが最も優れた加工機です。
- 金属製品にロゴや文字を入れたい
- 高精度に金属を切断したい
- 歪みの少ない溶接をしたい
- 母材を傷めずに錆を落としたい
- メンテナンスの手間を減らしたい
smartDIYsでは、卓上で使えるコンパクトなモデルから、産業用としても使える本格的なファイバーレーザー加工機まで、驚きのコストパフォーマンスでご提供しています。
「自分の素材できれいに加工できるか心配」という方のためのお試し加工サービスも実施していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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